最近のディスクロージャー実務
これからの数ヶ月、ディスクロージャー実務面では大きな変革が山ほどある。会社の経理、総務担当者たちの頭の痛い時期だ。ただでさえ神経を使うのに、今年はさらに苦労が絶えなさそうだ。会社法の対応でだ。
がっつり法律名が出てくるけれどもあしからず。
今期改正や新設となる法律や会計基準等は、全部で30はあるはず。(会社法の新設に伴い、このほかにも数十の関係法律が改正されているが、一般上場会社の継続開示書類の提出に関するものだけに限った)
1.会社法
2.会社法施行令
3.会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
4.会社法施行規則
5.会社計算規則
6.電子公告規則
7.企業内容等の開示に関する内閣府令
8.財務諸表等の監査証明に関する内閣府令
9.財務諸表等規則
10.中間財務諸表等規則
11.連結財務諸表等規則
12.中間連結財務諸表等規則
13.商法
14.役員賞与に関する会計基準
15.ストック・オプション等に関する会計基準
16.ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針
17.旧商法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い
18.会社法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い
19.株主資本等変動計算書に関する会計基準
20.株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針
21.退職給付に係る会計基準(一部改正)
22.貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準
23.貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準の適用指針
24.自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準
25.自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針
26.その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の会計処理
27.事業分離等に関する会計基準
28.企業結合会計基準及び事業分離等に関する会計基準に関する適用指針
———–法律以外の改正————————-
29.決算短信様式変更
30.コーポレート・ガバナンスに関する報告書
31.定款提出
てへ。31もあった(T_T)
やはり今回の最大の焦点は、会社法の施行だろう。
3/29の官報に掲載された「会社法の施行期日を定める政令」の交付により、会社法は平成18年5月1日より施行することが決まった。
そもそも会社法とはいったいなんぞやということだが、簡単に言えば身も心も新しくなった商法といったところだ。構成としては、商法第2編、商法特例法、商法施行規則、有限会社法を一つにまとめて再編したものだ。今まで、企業活動の国際化やIT化、資金調達方法の変化に対応するために、何度か商法の改正が行われてきたが、会社法制定はその総仕上げとして、個々の企業が経営環境の変化に対して柔軟に対応できるように、会社制度そのものの見直しを行ったもの。明治32年の商法成立以来の大規模な改正といえる。また、旧商法は旧仮名遣いでとにかく現代人には読みづらかった点も改正され、用語条文の現代化が行われた。
この「柔軟に対応」というのが逆に問題だ。企業にはその企業の法律といえる定款というものがある。会社の名前や組織、資本金や営業活動の範囲などが記載され、この内容の変更には株主総会での株主の3分の2の同意が必要というものだ。今まで商法ではこの定款はあまり重視されてこなかったが、会社法では、この定款が非常に重要になってくる。株主への配当方法や、組織体系、取締役会の権限範囲など、会社法で認められた範囲で多くの規定がなされ、これによって企業に幅広い経営方法が認められることとなった。
従って、この定款の変更内容が経営に重要な影響を及ぼしてくる。こいつが頭痛の種の一つ。僕は定款の中身には詳しくないからわからないけれども、ある程度は改正すべき点は決まっているらしいから、よく検討してもらいたい。
ところで、今回懸案の上記14から28の会計基準についてだが、このうち平成18年3月期決算会社の場合は15,16,17,18,21,24だけが影響してくる。そのほかは無視してよい。といったってたいした量だよこれ。該当がないことを祈ります。
参考までに、純資産の部の表示に関する会計基準だけ紹介しておくが、この会計基準は今回適用はされないが、今までの簿記の大前提となってきたことが変更され、議論の的となって宙ぶらりんになっていたことが解決したすごいやつ!なんだ。
いままで、簿記では貸借対照表は、資産、負債、資本の3つに分けられ、資産=負債+資本という式が成り立っていた。新会計基準では、貸借対照表を資産、負債、純資産の3つに分け、資産=負債+純資産としたのだ。これだけでは単純に名前が変わっただけのように見えるが実は中身が大きく違う。従来、資産=負債+資本だと書いたが、実は実務上ではこの公式が成り立っていなかった。正確な式を立てるとしたら、資産=負債(新株予約権を含む)+少数株主持分+資本(為替換算調整勘定を含む)といった状況だった。
勘定科目はややこしいが、要は資産性、負債性、資本性格の3つに分類しようとした場合、複数の性格を有するものや、時期によってその性格を変えるものなどがあるために、厳密に分けることができずに中間概念や余分項目が含まれてしまっていたのだ。
これに対して、新会計基準では、資産性又は負債性を持つものを資産及び負債に記載し、それらに該当しないものは、資産と負債の差額として、純資産の部に記載するとした。こうすることで、負債性がないのに負債に記載されていた新株予約権や、親会社にも子会社にも帰属しない少数株主持分、資産性も負債性も有しないヘッジ損益などもすべて純資産の部にまとめて記載することで納められることとなった。
国際的にもこの流れが進んでいて、一つの到達点として評価すべきものだと思う。
ややこしいことを1つだけ挙げてると。
原則として今3月期決算会社が提出する有価証券報告書では、会社法は対応させる必要はない。その理由はほとんどの記載箇所は期末日時点の記載だからだ。会社法は5月1日施工なので、3月決算会社は期末日時点では施行されていない。従って、会社法に基づいた記載を要しないのだ。
が、報告書の中で数カ所提出日時点で記載しなければならない点がある。ここに関しては完全に会社法の適用を受けてしまう。あるところは旧商法であるところは会社法で記載しなければならないのだ。こりゃまたとんでもなくややこしいところで、これにたたみかけるように有価証券報告書は開示府令と呼ばれる法律で、その記載様式がある程度決められているのだが、その開示府令が4月末に改正及び施行されることになっている。
つまり、単に会社法対応だけしているのなら様式で定められた部分は旧商法の言葉でもそのまま用いることになるから無視できるのに、中途半端に様式まで改正されてしまうと、様式で決められた部分まで文言の確認をしなければならない。
ほんとに経理さんは大変 がんばってください