世界最大の金融グループが誕生したが...

結局ほとんど何事もなく東京三菱とUFJの合併劇はとりあえず幕が上がりました。
数年前みずほ銀行やりそな銀行が合併発足したときにシステム統合をどうするかと言うことがずいぶん話題になりました。現在はどちらの銀行も完全に一つの勘定系システムに統合されていますが、みずほ銀行が発足当初、二重引き落としやいろんな問題が発生しました。
それがきっかけになって、システム統合のありかたが検討されたわけですが、当時は少しぐらい顧客に苦を強いてでも統合時に全てシステムを統合してしまって、商品の同一性や、全体の整合性を合わせてしまおうという考え方が強かったのです。たしかに、顧客の資産を管理する勘定系システムは、同時に銀行が提供するさまざまな商品(外貨預金や投資信託、住宅ローン)をも管理しているので、合併時に統合してしまえば、統合にあわせた新商品の提供も容易になるし、機動性も高くなるわけですが、どう考えてももともと別のシステムで稼動していたものを統合しようと言うのは総一筋縄でいくもんではないはず。
日本の銀行はIBM、富士通、日立などのベンダーが開発したそれぞれ全く別のシステムを、各銀行の経営背景や開発コストを天秤に掛けて採用しているため、非常にばらつきがあるシステムになっています。この差は単にパソコンを置き換えるようなレベルではないのです。
分かりやすく考えれば、Windowsが動いているパソコンで、その中のAというソフトで作られたファイルを別のWindowsパソコンで動いている、Bというソフトで開いて編集しようという場合には、AとBのソフトの差を埋めるソフトを介在させればいいので、それほど難しいことではないけれど、IBM、富士通、日立といった異なるベンダーが開発した銀行向け勘定システムは、そのOS(例えばWindowsということ 他にはMacやUNIXなどがある)のレベルから全くシステムが異なるのです。これは通信方法やファイル交換の考え方、ファイルの保存の仕方などなどほとんど全ての構造が異なると言うことなのです。
銀行システムは、膨大な処理をシステムエラーなどで停止することなく、間違いなく処理し、さらに24時間365日動き続けなければならず、非常に過酷なシステムなので、その条件に耐えられるシステムはそのベンダーのシステムの信用性の証となるのです。他の会社にシステムを販売する際にもベンダー側はソフトウェアとハードウェアも自社開発したものを紹介し、その信頼性の証として銀行の事例を挙げるわけだから、全てが独自である必要性があるのです。
こうした背景で開発されたシステムは全くつながりがないので、それらを繋げたり統合したりということは非常に難しいのです。ここはうまくいくけど、今度はこっちがだめと言ったかんじで。
かなり話は飛んだけれども、その接続リスクから考えると、一度に新しいシステムにまとめてしまった方が明らかに楽なのです。でも、みずほはそれを採用して、ミスを犯した。
そこで、それに見習って三菱東京UFJは当分の間は両者システムは既存のものを利用し、それぞれを接続することでとりあえずの合併を実現しています。もちろん金融庁がかなり神経質になっているので、そのテスト体制は相当なものだったと推察されるけれども、両社のシステムを統合せずに接続するというもっともコストのかかる選択肢を選び、もっとも顧客に負担のかからないようにすることを選んだんだと思います。
しかし、その結果を見てみると、両社全く別のサービスを合併後も続けることとなり、表の看板は東京三菱UFJでも、中に旧東京三菱か旧UFJのマークを記して、受けられるサービスもある意味従来の東京三菱とUFJとそれぞれ独立したままになってしまいました。旧東京三菱と旧UFJの間で手数料はかからないけれども、商品やサービスは違う。
はたして、これが顧客にもっとも負担を掛けない方法といえるのか。かなり疑問なところです。これでは、単なる提携とどこが違うのでしょうか。
新普通銀行の概要:
1.商号 株式会社三菱東京UFJ銀行
2.本店所在地 東京都千代田区丸の内二丁目7番1号
3.資本金 9,969億円
4.事業の内容 銀行業
5.主な代表者 会長 三木繁光(三菱UFJFG(旧東京三菱)) 副会長 玉越良介(旧UFJ) 頭取 畔柳信雄(旧東京三菱)
6.預金 106兆6,670億円〔平成17年9月末両行合算(連結ベース)〕
  貸出金 75兆2,931億円〔平成17年9月末両行合算(連結ベース)〕
  総資産 162兆7,141億円〔平成17年9月末両行合算(連結ベース)〕

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