天皇人間宣言
ちょっといつもと趣向の違った話題だけど、1946年にタイムスリップ!
ちょうど60年前のおととい、天皇による人間宣言が行われた。正式には名称はないけれども、公文書館では「新日本建設ニ関スル詔書」と呼ばれている。
1946年の元旦に行われたこのいわゆる人間宣言において、昭和天皇は自ら天皇の神格性を否定し、戦後の復興に向けての団結と平和国家建設を呼びかけた。
その当時の草案やメモが見つかったという記事があったのでこの話題を取り上げてみた。
どんな内容かはPDFでみてください。
僕がエントリーしたのは、その草案やメモが重要なのではなく、人間宣言そのものの考え方に新しい発見があったから。
「天皇を現御神とし、他民族より優越するなどという各観念から生じたものではない」としたところが新しい発見だった。
天皇が神格化されていたのは事実だけれど、他民族より優越するという観念が架空にしても作られていたということは知らなかった。これは日本国国民が臣民であり、天皇は神だから国民は神の子であるという考えならまだわかるが、優越しているという考えがあったとは知らなかった。
これでは三国同盟を結んだ、ドイツと同じじゃない。彼らは、自分たちが優越した人種で、ユダヤ人は自分たちの存在を危うくする下等な民族としたわけだけどこれと同じ。
天皇の人間宣言から知るとは思わなかった。
人間宣言の本文(現代語訳化してある)
(http://www.chukai.ne.jp/~masago/ningen.htmlより引用)
ここに新年を迎う。顧みれば、明治天皇、明治の初、国是(こくぜ)として五箇条の御誓文を下し給えり。
曰く。
1.広く会議を興(おこ)し、万機(ばんき)公論に決すべし。
1.上下心を一にして、盛んに経綸(けいりん=国家をおさめととのえる方策)を行うべし。
1.官武一途庶民に至るまで、おのおのその志を遂げ、人心をして倦まさらしめんことを要す。
1.旧来の陋習(ろうしゅう=悪い慣習)を破り、天地の公道に基づくべし。
1.智識(ちしき)を世界に求め、大いに皇基(こうき=天皇が国を治める事業の基盤)を振起(しんき=ふるい起こす)すべし。
叡旨(えいし=天子の考え)公明正大、また何をか加えん。朕はここに、誓を新たにして国運を開かんと欲す。すべからくこの御趣旨に則り、旧来の陋習を去り、民意を暢達(ちょうたつ=のびのびしているさま)し、官民挙げて平和主義に徹し、教養豊かに文化を築き、もって民生(みんせい=国民の生活)の向上を図り、新日本を建設すべし。
(中略)
しかれども、朕は爾(なんじ=主に目下の人に用いられる)等国民とともにあり、常に利害を同じうし、休戚(きゅうせき=喜び悲しみ)を分たんと欲す。朕と爾等国民との間の紐帯(ちゅうたい・じゅうたい=社会の構成員を結び付けている血縁・地縁・利害などのさまざまな条件)は、終始相互の信頼と敬愛とによりて結ばれ、たんなる神話と伝説とによりて生ぜるものにあらず。天皇をもって現御神(あきつみがみ)(現人神=あらひとがみ⇒人の姿をして、この世に現れた神。天皇をいう)とし、かつ日本国民をもって他の民族に優越せる民族にして、延(ひ)いて(さらには)世界を支配すべき運命を有すとの、架空なる観念に基づくものにもあらず。
朕の政府は、国民の試煉と苦難とを緩和せんがため、あらゆる施策と経営とに万全の方途(ほうと=方法)を講ずべし。同時に朕は、我が国民が時難に蹶起(けっき=勢いよく立ち上がること)し、当面の困苦克服のために、また産業および文運(ぶんうん=学問や芸術)振興のために勇往(ゆうおう=いさんでいく)せんことを希念(きねん)す。
(中略)
一年の計は年頭に在り。朕は、朕の信頼する国民が、朕とその心を一にして、自ら奮い、自ら励まし、もってこの大業を成就(じょうじゅ=物事が思いのとおり完成)せんことを庶幾(こいねが=しょき)う。
この年から、毎年正月に一般参賀が行われるようになった。
ちなみに昨日行われた皇居の一般参賀で、天皇陛下は以下のような感想を話されています。
昨年は,終戦から60年の年に当たりました。先の大戦では日本人310万人が亡くなり,また,外国人にも多くの犠牲者が生じました。私どもは戦争で亡くなった人々のことを決して忘れることなく,この多くの犠牲の上に今日の日本が築かれたことに思いを致さねばなりません。
暮れになって降り始めた大雪で,各地で大きな被害が生じています。そのために20人を超える人々が亡くなったことを本当に残念に思います。自然災害の被害を受けた地域で,避難生活を続けている人々のことが案じられます。また,帰島を果たした三宅島の人々,帰島を果たせずにいる人々が共に健康を保つよう願っています。
新しい年が皆一人一人にとって幸せなものであることを祈り,より良い社会を作るために皆が助け合って力を尽くしていくことを心から念じています。
一般に向けては
新しい年をともに祝うことをまことに喜ばしく思います。
年頭に当たり、国民の幸せと世界の平安を祈ります。
と話された。
平和ではなく平安なんですな。