【映画】ヒア アフター
こういう映画は久しぶりに見た。なんと表現していいのかなかなか整理がつかない。
「ヒアアフター」とは「来生」のことだ。生きている人間から「死の世界」扱うとてもスピリチュアルな内容であるにも拘わらず、「こういうものだ」という強制的な刷り込みがあるわけでもなく、同じ生きている人間のとても等身大の悩みや思いをストレートにそして一つずつ紡いでいるという感触だった。
この映画は、しばらく前にロードショーのチラシを見たもののいつの間にか忘れ去ってしまっていた。ちょうど、今週からiTunes Music Storeでレンタルと販売が開始されたのをきっかけに見てみた。冒頭にCGでありながらも非常にリアリティのある津波に襲われるシーンがある。日本での映画の公開が東日本大震災の直前というタイミングだったそうで、非常にタイムリーな映画だった。(震災によって公開中止になったほどだ。)クリントイーストウッド監督作品、マットデイモン主演作だ。
死者の世界と繋がりを持ち、死者と会話することが出来る特殊な霊能力を持っていることに強い悩みを抱えている主人公ジョージ、ジャーナリストで津波に襲われるというまたとないスクープを経験したものの、水に飲まれた中で見た世界(臨死体験)について、真剣に追い求めようともがくマリー、薬物中毒の母親を持ち、仲のよい双子の兄を不慮の事故で亡くしてしまい、喪失感からたった一人の気持ちのよりどころであった兄へのコンタクトを真剣に追い求める少年マーカス。住んでいる国からして全く異なる3人のストーリーが、全く別々に進んでいくが、最後には一つの点にたどり着き、生への喜びを見いだす。3人のストーリーが別々に進んでいくのに、それが繋がったことに安心感すら覚えるような、登場人物達が等身大に悩んでいることがとても身近に感じられるような映像や音響によって、映画に吸い込まれると言うよりそんな世界に自分もいるんだと思わせるようだった。誰にでも起きてしまいそうな日常的なカットであるにも拘わらず、押しつけがましくもない。
もっとも、身近な人の死から生への喜びを見いだすということ自体が、疑問だといわれればそれまでだが、震災の直前に作成公開されたという「偶然」や、全く異なる世界に生きる3人が見えない糸で繋がっているという映画のストーリー構成の「偶然性」は、震災を体験した人にこそ是非ともいオススメしたい映画だと思った。