WWDC2011とMac OS XとAirと
ちょっと気合いが入ってしまって、アップルマニア的な話を長大に。
まもなくWWDC(アップル主催のソフトウェア開発者向けカンファレンス)が開催される時期。ここ数年、アップルにとって重要な製品サービスが発表される場になってきました。最近だと、
WWDC2010 – iPhone4
WWDC2009 – iPhone OS3.0 / Mac OSX Snow Leaoard Demo
WWDC2008 – iPhone3G / Mac OSX Snow Leaoard Announce
WWDC2007 – Mac OSX Leaoard Demo
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このイベントは1983年から開催されていますが、ここ数年はMac OSよりもiPhone関連の発表が多いようですね。しかし、次期iPhoneについてはいろいろ憶測が飛び交ってはいるものの、今回のイベントでは発表されない公算です。特にモバイルデバイス本体と内部ソフトウェアは切っても切り離せない関係にあると思いますので、製品発表がなければ次期iOSの発表もできない。その逆もしかりと思いますし、iPhone4のホワイトモデルやiPad2がいずれも今年の3月に発売されており、このタイミングで次期iPhoneの製品が公表されるほど期が熟してはいないように思います。
そこで今回のイベントでは次期Mac OSX「Lion」のリリースが発表される公算が大きいと思います。製品の開発発表からは1年経ちましたし、つい先日も開発者向けのベータ版のような「developper preview」の更新も行われたようです。
大きな噂にはなっていませんが、同時にMacBook Airのリニューアルも発表されると僕は思っています。WWDCは開発者向けのイベントですから製品本体のみのリリースをする意味はほとんどないのですが、今回のLionにとって、Airの存在は切っても切り離せないほど重要な位置を占めるようになると思っているのです。ただ今回は、WWDC2011を見据えて、Mac OSX Lionについていろいろまとめてみるということで、
・Mac OS X Lion
「Launchpad」という名前ですが、パソコンと言うよりスマホの画面といった感じですね。ホーム画面にアプリケーションを並べて、直接起動ができる画面です。慣れ親しんだモバイル機器での操作性の良さをパソコンに取り込み、そしてモバイルでもパソコンでも同じような操作性を実現させるというものなのです。
初めてiPhoneが発表されたとき、製品の発表と同じくらい会場を沸かせたのが、長年アップルが養ってきたパソコンOS、Mac OSXをモバイル用にカスタマイズしiPhoneに載せたことでした。スマホの黎明期でありましたが、Googleのandroidもなく携帯各社が独自開発したOSが台頭していた頃。パソコンOS→モバイルOSというベクトルはほとんど存在していませんでした。Mac OSXをベースとしているだけあり、グラフィックや操作性、拡張性は群を抜いたものがありました。
その後、iPhone4やiPadが発売され、モバイルOSもMac OSXとは別の道で進化を続け、アプリケーションをフォルダー分けできる機能や、同時に複数のアプリケーションを起動したまま切り替えるマルチタスク、コピー&ペーストなどが搭載されました。今やiOSデバイス(iPhoneとiPad)は世界で数億台が普及しており、UIとしてもかなり浸透している状況だと思います。
そこで今回登場するLionは、従来と真逆のモバイルOS→パソコンOSというベクトルをつくり、モバイルデバイスで養った技術と、人々の慣れ、をそのままパソコンに取り込んでしまおうというのです。多くのアプリケーションを起動するにも、モバイル機器で見慣れた画面構成ですぐに起動できるという感覚的なメリットは結構大きいのではないでしょうか。
同時に、iOSデバイスではおなじみの「マルチタッチジェスチャー」もさらに拡充され、画像の拡大縮小を行う”ピンチ”やページをめくる”スワイプ”などもモバイルから採用されます。
#2 64bit。
3月にアップデートされたMacBook ProやiMacから、ハードウェアを管理するカーネルレベルが64bit化しました。OSの動き自体はWindowsに先駆けて、64bitが採用されていましたが、Mac本体の駆動だけは32bit部分が残っていました。それが製品本体で64bit化が採用されたことで、すべてが64bitとなるわけです。直接的にはあまり影響を感じない点ではあるかと思いますが、アプリケーションの高速化には貢献しそうです。
#3 ファイル管理。
個人的には従来から気になっているファイルシステム関連の話。
2008年頃UNIXで採用されたことがあるZFSというファイルシステムがMacに採用されるという話がありました。実際に移植プロジェクトも進んでいたものの、2009年の秋にプロジェクトの停止と、サイトの閉鎖が発表されました。
いつものことながら理由と言えるような理由は公表されていなかったのですが、当時は『単にプロジェクトを放棄するだけならばサイトを消去する必要がないので、なにか今後の秘策があるに違いない』と目されていました。そして、今回のLionでその片鱗を見られる気がするのです。新たに追加される機能として、
①作成した書類の連続するバージョンを自動的に保存し、簡単に修正履歴の確認、内容の編集、以前のバージョンに戻せる「バージョン」
②Macやアプリケーションを再起動した場合、アプリケーションを最後に使った状態に戻せる「再開」
③作業中の書類を自動的に保存できる「オートセーブ」
④内蔵/外付けドライブを高速に暗号化、またMacから瞬時にデータ消去可能な新しい「File Vault」
今までパソコンと言えば、フロッピーアイコンの「保存」ボタンを押すのがあたりまえ。押し忘れて作業している間にデータが消滅するなんてことがよくありました。内部的にはある程度キャッシュしつつ保存ボタンが押されたときにディスクに記録するという方式を採ることで、高速化とディスクアクセスの低減を図っていたのだと思いますが、いわゆるSSDが登場したことで、ディスクアクセスについて遅いという概念がかなり減っています。SSDで問題になっている「ディスクアクセスが多いと、メモリセルが消耗してしまう問題」がありますが、この点も改善した「TRIM」という機能も搭載予定とか。
保存の意識を捨て、常に最新のデータが保存してある一方で、過去の任意の時点にすぐに戻れる。そして、暗号化も高速になる。アップルらしいパソコンとのつきあい方という感じですが、これらを総合するとどうもZFSで放棄された新しいファイルシステムという言葉が出てくるような気がしてならないのです。現在Macで採用されているファイルシステムHFS+は導入されてから既に13年が経っており、全く新しいとまでは行かなくても、従来から拡張したファイルシステムが出現してもおかしくないのではないかと思ったりします。
#4 AirDrop。
パソコンが一人一台という時代はある意味もう昔の話になりつつあります。一人で複数台という人も結構いますし、家の中では複数台なんて当たり前になってきました。そこでちょっとした問題になるのがファイル共有。以前からちょっと面倒だったのですが、「セットアップなしでMacから別のMacへワイヤレスでファイルをコピーできる「AirDrop」」という機能が今回から追加される模様。単にファイルの共有に伴わず、ドライブとして常に認識してくれれば、もうパソコンの壁を意識することなくファイルのやりとりができて便利ですね。
#5 縦書きサポート。
今となっては、あまりニーズがないようにも思えますが、OSに標準インストールされているテキストエディターがバージョンアップし、縦書き入力ができるようになるとのこと。
wordでは標準サポートされていますが、他言語にOSレベルで対応するという気持ちの表れでしょうか。
#6 ところで、、削除される機能。
①大きいのは、Rossetaの廃止。Macはその昔、IBM製のPowerPCというCPUを採用していましたが、2006年にIntelへの移行を発表し、現在では完全にIntelのCPUとなって久しいのですが、Macはデザイナーや印刷現場で昔から広く使われていたことが絡み、現在でも旧来のアプリケーションを使用しているユーザーが多数います。そのユーザーが最新OSに移行しつつも、旧来のアプリケーションを使えるようにするエミュレーターがRossetaでした。しかし、現行のOSX Snow Leopardでも、標準インストールされておらず、ユーザーが意図的にインストールしなければいけませんでしたが、Lionでは完全に廃止されることになるようです。
いつかはそうなることが分かっていた上に、アップルにしてはかなりの時間と段階を経ての完全廃止となるわけで、そこまで多きな影響はないのではないでしょうか。
②意外ではあるものの、納得できるのは、Front Rowの終了でしょうか。
Front RowはApple Remote(リモコン)を用い、音楽や映像の視聴、写真の閲覧をリモコン操作行うソフト。2005年に発表され、パソコンをエンターテイメントと密接にする戦略の中核を成すソフトでしたが、Apple TVにその役割を移す中で、パソコンでの専用アプリケーションの必要性はなくなりつつありました。現在のバージョンも2009年末にアップデートされたままです。
③最後に一般的にはたいしたことないですが、Javaランタイムの提供終了。既に公式にアナウンスされていますが、今後は、Javaランタイムの提供大元である、Oracle(旧Sun Microsystems)から提供されることになるようです。
#7 導入の注意点。
現行のSnow LeaopardでもOSレベルでは従来のPowerPCには非対応となりましたが、先程も取り上げました、Rossetaにより、PowerPC対応アプリを搭載することができました。しかし、LionはRosseta非搭載となることで、完全にIntelのみ対応となります。さらには、ネット情報によると、Intel Core2 Duo以上がインストール条件となっており、IntelでもCore DuoやCore Soloマシンでは、インストールができないようです。
#8 Mac App Store。
ここまで目論んでいたかと舌を巻いたことなんだけれど。昨年の終わり頃からMac App StoreというMac用アプリをネット経由でダウンロードするサービスが始まったのですが、今回のOSアップデート自体もこのスキームを通して提供されるという話。iTunes Music Storeで買い物をしたことがある方はご存じだろうが、あれと同じような仕組みで端末とアカウントにリンクして、アプリケーションを購入・更新・管理できるアプリ。iTunesで導入されたときには、むしろMacのアプリでなぜこのスキームが採用されないのか疑問だったのだが、実はOSのアップデートすらわざわざDVDを購入するのではなくダウンロード販売してしまおうというのだ。クラウドサービスもかなり徹底してきたイメージだ。
・その他のこと
#1 iTunesのクラウドサービス。
もう、これは公然の秘密状態ですが、今まではオンラインで購入した音楽も、自分でCDから取り込んだ音楽も、iTunesソフトを利用したローカルで管理されてきました。つまり個々のパソコンの中に。それが、GoogleやAmazonが先んじて始めたように、データ自体をオンラインで管理し、必要に応じてストリーミングという形で聞けるようにするという仕組み。Appleは2年ほど前から東海岸に大規模なデータセンターを建設していて、全世界のユーザーはオンライン上に曲を置いておいて、ストリーミングしたとしても十分なサーバー設備を拡充しました。さらに、楽曲提供している各音楽レーベルとも新形態の楽曲利用に関しての契約を取り付けたとのこと。今回のWWDCで発表と相成るでしょうか。
ただ、個人的にいまいち分からないのは、なぜオンライン上に置く必要があるのかという点。毎回ストリーミングしていたらネットワークリソースがいくらあっても足りないですし、ネット環境がない場所では不便。
#2 Mobile Me。
iTunesクラウドサービスに絡んで、Mobile Meのアップデートが一時期噂されていました。しかし、具体的なアップデート内容が分からないばかりか、大規模なデータセンターはiTunesクラウドサービスのためとされており、Mobile Meの更新はちょっと怪しいところです。ちなみに、自分は6月末で1年分の契約が切れますが、今日ちゃんと「契約更新督促」メールが来ましたし。