AIBO、QUALIA、QLIO中止
このニュースは非常に残念。
SONYの、いや日本の「技術の粋」と思わせる事業がことごとく終わってしまいます。
SONYは、このたび発表した第3四半期の業績公表に際して、AIBO、QUALIA、QLIOの製造開発の中止決定を発表した。
AIBO及びQULIOで開発されてきたAI(いわゆる人工知能)技術に関しては、製品の製造は中止するものの、技術の開発は継続し、さまざまな製品の開発に役立てるとしている。
僕がもっとも残念だったのはQUALIAの中止。SONYの前会長出井氏がSONYの威信をかけて立ち上げたプロジェクトだった。といっても威信をかけたのはSONYではなくて、日本だった。SONYはそのお膳立てをしてあげたといえる。もちろんこのプロジェクトにSONY以外の企業は入っていないが、だ。
コストを度外視して、徹底的によいものを作る、技術力、アイデア、想像力や忍耐力の求められる非常に難しいプロジェクトだった。ものづくりの中で最も妥協せざるを得ないコストの問題がなくなったときに、どこまですばらしい技術を盛り込めるのか、どこまで誰もが納得する技術を求められるのかが問われるものとなった。あくまでも売るための製品である以上は高くても売らなければならない。売ることが目的ではなくても、だ。
しかし、そのような環境の中で開発されたさまざまな製品は非常にすばらしい高度な機能ををもちひとびとを驚かせた。ものによって違うが市価の10倍以上の値がつくのは珍しくなかった。
だがその一方で、そのような技術開発の姿勢は、日本の技術者たちを大いに奮い立たせてきた。コストコストで新たに生まれてくる技術もなくはないが、本当に人を喜ばせる技術は日本人の技術魂で作り出せるのだということを。
いつかの「日経スペシャル ガイアの夜明け」で、QUALIA製品のうちの一つNo.005「ハイビジョン液晶テレビ」だったかNo.006「SXRDプロジェクションテレビ」だったかの製作を1からすべてたった一人でこなす「マイスター」が紹介されていたのを思い出す。女性だ。他にはこの製品を作り出す人はいないのだから、もちろん世に出たすべての製品は彼女の手で組み立てられたものだ。記憶では数百点の部品で構成されており、単に組み立てるだけではなくさまざまなマイスターとしての調整も施されていた。
マイスターとは、ドイツの職人に与えられる称号で、職人としての国家試験をパスしさらに全国各地での職人修行を終えたものにだけ与えられるもので今でも営々と受け継がれている。
SONYは業績発表の場で、不採算事業を縮小して、VAIOを中心とした高収益事業に特化していく方針を打ち出していた。
いま、SONYの経営陣には出井氏時代の幹部はいない。SONYが10年以上続けてきたCMの最後のロゴも新経営陣になってから変わった。サイトに訪れた人が書き込んだメッセージを基に常に変化し続けていたものから、「like no other」へ。
日本をしょって立つ大企業だからこそ与えることが出来た夢を、やはり維持することは出来ないのだろうか。