iTunes Muchの日本ローンチを控えて

Amazon Cloud Player

昨日、Amazon Japanが日本で「Amazon Cloud Player」を開始しました。このサービスは、アマゾンが提供している音楽配信サービス「Amazon MP3ストア」で購入した音楽を、インターネット経由で様々な端末から聴けるようにするクラウドサービス。もともとあったAmazon MP3ストアは、楽曲のダウンロード販売に特化したサービスでしたが、楽曲の保存場所をクラウドにすることで、ユーザーがファイル管理を意識する必要なく視聴ができるサービスです。同様のサービスを、米国では2011年の3月からはじめており、日本対応版の開始ということになる。

このサービスの特徴はなんといっても楽曲とクラウドのコラボレーション。ファイル管理が全てクラウド上で行われており、ユーザは楽曲の購入処理をするだけで、ダウンロードを必要としない。ただし、その代わりに楽曲の再生もサーバーで行われるため、視聴はネットワークが繋がっているところでしか行われない。まさにクラウド時代を象徴するサービスと言える。

iTunes Much

2012-11-16-itunesmatch

楽曲販売サービスとして世界最大となったAppleのiTunes Music Storeは、クラウドサービスとして「iTunes Much」を2011年12月から開始しています。こちらは、またちょっと違ったクラウドサービス。

・iTunesライブラリにある曲は10台のデバイスで聴くことができる。
・CDから取り込んだ曲がパソコンのライブラリに存在し、iTunes Storeに在庫がある場合、高音質(256kbps)なファイルに変換してくれる。
・iTunes Storeに在庫がない手持ちの曲は、そのままiTunesのサーバーにファイルが吸い上げられて、Apple IDに登録された各種端末に配信される。
・米国では年間25ドル(約2,000円)。

iTunes Music Storeで購入した楽曲はもちろんのこと、ストアになくても、クラウド経由で他のデバイスでも利用できるようにするサービスなのです。

現在日本では利用できませんが、今年の初めにAppleのシニア・ディレクターのピーター・ロウ氏がインタビューにて「今年後半に日本でもスタートする」意向を明らかにしました。2日ほど前にAppleの公式ページ内に日本語版の公式ガイドが公表され、まもなく開始するのではないかと取りざたされていた矢先のAmazon Cloud Playerのローンチなのです。

 

著作権の課題

しかし、iTunes Muchには著作権の問題がいろいろ潜んでいます。例えば、ユーザーが違法に入手した楽曲ファイルをiTunes Muchを通すことで、あたかも正式なコストを払った利用者に早変わりしてしまい、違法な利用者が合法利用者になってしまうのです。

また、AmazonやAppleの楽曲のクラウドサービスが日本ではなかなか始まらない裏には日本の著作権法の2つの特異性があると言われています。1つは「著作隣接権者」の問題。もう1つは「複製権」の問題。

日本の著作権者は、楽曲の演奏に拘わったアーティストに留まらず、制作会社やさまざまな事業者にも及ぶため、それら全ての関係者との交渉が必要となり、楽曲単位でそれだけの交渉を行う煩雑さが大きな壁になっていると言われます。

「複製権」問題では、ユーザーの音楽ライブラリをAppleのサーバーにアップロードすることが楽曲の複製になるという考え方で日本の著作権法では無断複製は禁止されています。ライブラリの楽曲がiTunes Storeにない場合は、特に問題となり、これがiTunes Muchに直結する問題と言われます。

 

Magic Money

日本では法の壁が高いものの悪いことばかりではないのがiTunes Much。このサービスには従来の音楽業界には考えられない「Magic Money」を生み出す仕組みが隠されているのもポイントです。

今までアーティストの収入源といえば、ユーザーがCDを購入したり、ネットで楽曲ファイルを購入したときに限られており、それらをユーザーが何度再生したとしても、再生行為だけではアーティストが料金を徴収することができませんでした。それはつまり、未来永劫の再生権をユーザーが購入したからだと考えられてきたわけです。しかし、iTunes Muchは、クラウドサービスであるため、楽曲を再ダウンロードしたりオンライン上で再生した場合、再生行為がサーバー上で認識できるため、その行為に対する使用料を都度、アーティストにロイヤリティーとして支払われる仕組みが採用されています。今までは一度しか得ることが出来なかったお金が、将来に亘っても少しずつ得ることができるようになっている画期的な課金体制なのです。さらにiTunes Music Storeを経由せずに購入したものまでも、ランニングのロイヤリティーを受け取れることになるという、本当に画期的な「Magic Money」なのです。

 

まとめ

iTunes Muchがたくさんの著作権問題をはらんでいるとはいえ、Appleには当然、アーティストにもユーザーにも全ての人が損をしない、得をする仕組みととることもできる素晴らしいビジネスモデルでもあります。先日、iTunesサービスに登録されてこなかったSONYレーベルのアーティスト楽曲がiTunesでも販売が開始され、日本語版のiTunes Much紹介ページも開設され、いろいろな意味で地固めが進んでいるようにも思えますが、果たして近々リリースされるのでしょうか。楽しみです。

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