一連の市場混乱をまとめる

株式に関連する仕事をしている端くれとして、11月1日と12月9日に発生した東京証券取引所の市場混乱問題をまとめてみた。
さまざまな報道をもとにまとめており、現時点では間違いもあると思うが発見時点で修正します。
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12月12日 16:34 最初に投稿
12月12日 20:35 損失額を追加、ストップ高の記載を追加、東証からの連絡時間を修正
12月13日 10:31 損失額確定を追加、現金決済の根拠を追加、売買再開日を追加
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1.11月1日システムの全面ダウン
●障害発生から復旧の経緯:
平成17年11月1日
午前6時47分
システムを通常通り立ち上げ処理を行ったが、会員証券コードの読み込みが正常に行われず稼働せず、取引参加者からの注文入力が行えない状況が生じた。再起動を2度行っても同様だった。
午前7時半ごろ
各証券会社へ障害の発生を通知 午前8時の注文開始を延期。
午前8時30分
売買取引の停止を決定。各証券会社に通知。
午前9時00分
株券、転換社債型新株予約権付社債券などの全銘柄の売買を停止
東証の株式取引停止の影響で、システムを共用している福岡証券取引所は全株式などの売買を停止、札幌もコンピューターによる取引を停止
大阪証券取引所には午前9時の取引開始から株式売買の注文が殺到。大証一部、二部市場で、証券会社などに配信する株価情報に遅れが生じたが24分後に解消。東証と重複上場している銘柄を中心に幅広い銘柄に買い注文が入り、出来高概算は1847万株と前日比83%増加。
売買システムの開発・保守を委託している富士通株式会社及び運用業務を委託している株式会社東証コンピュータシステム(TCS)により、原因を究明し、対応策を実施した。
正午頃
システムが復旧
午後0時45分
株式 後場注文受付開始(当初午後0時40分と報道を訂正)
午後0時55分
CB 後場注文受付開始(当初午後1時20分と報道を訂正)
午後1時30分
取引参加者による注文発注に要する時間を確保し取引を開始。
午後3時00分
通常通り後場を終了
翌11月2日
通常通りシステムが稼動
●障害の原因:
取引参加者関係の情報を読み込むプログラムが本来取得すべき情報と異なる情報を読み出したためにシステムエラーが発生し、売買システムの立上げ処理が停止。
その原因は、
(1)注文処理能力の増強対応に関する確認テストの過程で、10月9日に潜在不良が発見され、その修正プログラムを売買システム上に登録(10月13日)する作業に際し、富士通からTCSへ送付した資料に、一部情報の欠落があった。
(2)そのため、売買システム内のプログラム構成が誤った状態となり、10月31日に実施した定例のディスク圧縮整理処理によって顕在化し、これにより本障害が発現することとなった。
2.みずほ証券による株式大量誤発注
●事件の経緯
平成17年12月8日
この日人材派遣会社のジェイコムがマザーズ証券取引所に上場(管理は東証)初日で価格はついていなかった
午前9時27分
みずほ証券が法人顧客の注文(ジェイコム株を1株61万円で売却)にもとに売り注文を出す
この時点で画面入力の順序を間違え、1株1円で61万株売却を意味する注文を行っていた
注文画面上では、市場価格との乖離の警告が出たが無視した
午前9時28分
注文から1分25秒後に間違いに気づき、「1株1円を61万株」の取り消し注文を出したが、3回ともエラーが発生
東証よりみずほ証券に連絡(気づいた前後関係は不明)
午前9時32分
東証と直接接続している売買システムを通しても数度取り消しを行ったが受け付けられない
午前9時40分前
ジェイコム株ストップ安価格の57万2千円で売れ残り47万株(自己勘定)を買い注文により回収
午前9時40分後
ジェイコム株ストップ高の77万2千円に
午後2時頃
幹事証券会社各社(日興コーディアル証券、日興シティグループ証券、マネックス証券、三菱UFJ証券)が関与を否定
午後3時
後場終了
午後4時頃
みずほ証券が誤発注を認める公表を行う
12月9日
午前1時50分
東証が記者会見 東証側に問題はなく発注時の警告を無視したみずほ側に全面的な責任があると発表
(リアルタイムの処理欠陥はあったものの処理終了後にも受け付けられなかったことから、みずほ証券の申し出により東証がシステム開発の富士通に連絡。調査の結果判明。)
ジェイコム株式の売買を終日停止
12月11日
午後
問題の収拾には現金による決済を行うことが決定
午後11頃
東証が緊急記者会見を行いみずほ証券が取消し注文を行うことができなかったことについて、東証の売買システム上に欠陥があることが判明
鶴島社長が事態の収拾後引責辞任することを表明
12月12日
8日に日興コーディアル証券が305株、日興シティグループ証券が3000株、日興アントファクトリーも150株のジェイコム株式を取得していたことが判明。合計株数は3455株と、ジェイコム株の発行済み株式数の24%弱にあたる。
12月13日
株券受け渡し期限日
→現金決済へ(決済額91万2千円で確定)
12月14日
ジェイコム株売買再開
●システム不具合の経緯(説明)
市場にはまだジェイコム株式が流通していない状態で、8日の取引が開始された。
投資家たちは新規上場のジェイコム株の買値を指定していて、午前9時27分時点で1株67万2千円(1単元1株)で買うという特別買気配値が設定されていた。
この状態で、ジェイコム株の幹事証券会社(要は株式を保有している証券会社)であるみずほ証券が1株1円の売り注文を出したため、この時点で株価が決定され、初値67万2千円が確定した。
同時に売買の制限値幅がこの初値を基に設定され、上下10万円とされた。
しかし、売り注文が「1円を61万株」で大量であり、初値決定後も売れ残っていたため、売れ残りの株式を約定するために、みなし処理が行われた。
みなし処理とは、初値決定後に売れ残っている売り注文を初値により設定された制限値幅の下限である57万2千円(初値67万2千円?10万円)の売注文として登録して、大量の買注文と間断なく順次約定する処理。
これにより、67万2千円から順次買注文を消化する形で、約定を繰り返しつつ、値段が下落した。
このような状況下でみずほ証券による注文の取消しが複数回にわたって行われたが、当該取り消し注文が発注された時点で、はじめの売り注文が約定処理中であった場合に、対象注文が取消されないという不具合が発生したため、取り消し注文が受け付けられなかった。
これは、みなし処理がなされ、それに対応する注文が存在する場合に生ずる不具合。
最終的に、みずほ証券自らの47万株の買い戻しにより上値制限いっぱいの77万2千円のストップ高となった。
●損失額(みずほ証券の直接分のみ)
初期の損失額は6億円
東証のシステムが正しく動作しなかったことによる追加損失を加え270億円
株の買い戻しによる追加損失等最終損失額405億円
(8日に買戻しが出来ず一般投資家と約定してしまった分=9万6236株)
●決済金額の根拠
決済金額91万2000円は、8日にみずほ証券が誤発注する直前には、この金額で売り注文と買い注文が相次いでいたため、「かりにみずほの誤発注がなければ、成立した可能性が高い値段」として採用された。
●過去の事例
・2001年11月 欧州系のUBSウォーバーグ証券(現UBS証券)が、東証1部に新規上場した広告最大手の電通株に対し、「61万円で16株の売り」とするところを、「16円で61万株の売り」と誤って注文を出した。一部成立し、損害を被る。
・2001年12月 ドイツ証券が、いすゞ自動車株について、売買単位を間違えて注文を出したが、取引終了直前だったことから、売買は成立しなかった。

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