【書籍】美しい国へ
7月の終わり頃、本屋でたまたまこの本を見かけた。内容はどんなでもいいからとりあえず買ってみた。内閣官房長官安倍晋三の単独著作だ。7月20日に第1刷が出されてから、たった5日後に第2刷がでているという売れ行きだ。
今次期自民党総裁選が焦点になっているさなかだし、自民党総裁はイコール首相だから、次の最有力候補の本ぐらい読んでおこうと思ったのだ。政策提言だと思ったら、結びの言葉が、
「本書はいわゆる政策提言のための本ではない。私が、十代、二十代の頃、どんなことを考えていたか、私の生まれたこの国に対してどんな感情を抱いていたか、そしていま、政治家としてどう行動すべきなのか、を正直につづったものだだから若い人たちに読んでほしいと思って書いた。この国を自信と誇りの持てる国にしたいという気持ちを少しでも若い世代に伝えたかったからである。」
でした。
まあ、そんな感じだったかな。祖父・岸信介、父・安倍晋太郎に影響を受けて、また、自らの政治活動の中で培った思想について語っている本というのが総括でしょうか。
正直に言うと、この本を読むときにはじめから最後まで非常に緊張して読んだ。政治家の単独著書というのをあまり読んだことがないからなんだけれども、いくら政策提言ではないと書いてあったって、個人の意見ではあるから「私はこう考えるからこれは正しい」とか「これはこう解釈する」と書いています。靖国問題は当然のこと、北朝鮮の拉致被害者の問題、少子高齢化の話、教育、日米同盟について多岐にわたる意見が書いてあるから、とにかく洗脳されまいと緊張したわけ。
で結果として思ったのは、確かに彼の考えていることをたどっていくとその結論にたどり着くのはわかるけれども、議論すべきことをすり抜けてしまっているのではないかと思うところが何カ所かあった。彼はその点について、議論すべきところではなく「人間として」論に持ち込み、頭で考えることではなく当然のことだと展開していた。
今日、小泉首相が終戦記念日(条約上の日で実際には異なるけれども一応)の靖国神社参拝を強行しましたが、この本で安倍官房長官は靖国参拝に賛成とはっきり書いています。
「いかなる国民も、国家のために死んだ人々にたいして敬意を払う権利と義務がある。もし靖国神社を焼き払ったとすれば、その行為は、米軍の歴史にとって不名誉きわまる汚点となって残るでしょう。歴史はそのような行為を理解しないに違いない。」という、ブルーノ・ビッダー神父の言葉を引用して。
この言葉だけを引用すればきれいに片づくように思うけれども、どんなに当時決着をつけたことだってそんなに簡単なもんじゃないです。安倍さんはいろんな意味で見地の広い人だと思うけれども、この感じで行くとなんでもずばずばと切り込んでいくような政策をしていくのではないかと思う。彼の思う「美しい国」と国民が思う「美しい国」とができるだけ乖離しないことを願うばかりだ。