【映画】ピアノマニア
世にマニアは数多あれど、プロとしてマニアを支えることを生業にしているひとが、ここにも居たのかと思わされるドキュメンタリー映画。世界に名だたるプロのピアニスト達の音の要求に様々なアプローチで解決していく様を記録したものだ。
主に主演は、ハンブルグ・スタインウェイの技術主任で調律師のシュテファン・クニュップファー氏。ポスターの中央の人物。
ピアノに素人な僕は、この映画を見るまで調律師は正しい音がでるように調節するのが仕事だと思っていた。しかしそうではなかった。音を調律する部分に加えて、音を調音する部分も仕事なのだ。むしろ調律は当たり前。いかに演奏者が求める音を産みだすか。研ぎすまされた感性によって創り出されていく音を楽しむこととなる。
そもそも、スタインウェイのピアノはすべて手作りだ。当然にそれぞれに音の個性を持っている。ゆえにすべてのピアノには製造番号が振られていて、この番号のピアノがどのような音色なのか皆が知っている!その1台を選び、持ち合わせた音色を活かしつつ、会場や目的に合わせて特別な装置を取り付けたり、ハンマーを交換したり、、、ありとあらゆる調音を重ねていく姿を見ることが出来るのだ。
中で印象的な言葉があった。
ピアノは人間が扱うには大きすぎる。もっとも大きな楽器だ。それだからこそ無限の可能性を持ってもいる。
シュテファン氏自身、プロであった期間が長かったようだ。でも、プロとして生きていくためにはあまりに壮絶で精神が持たなかったと。それくらい音に対するこだわりを持ち続けなければならないピアニストから全幅の信頼を得ている、調律師。とてもマニアの一言では収まりきらない壮絶な現場が楽しめて一本。ピアノに興味がない人にもオススメしたい。